女性に多い疾患

膀胱炎について

膀胱炎は、膀胱に細菌が感染して炎症を起こす病気で、特に女性に多く見られます。急性膀胱炎は、トイレが近い、排尿時の痛み、残尿感などの不快な症状を引き起こします。早期の診断と適切な治療で改善が見込まれる疾患です。

主な症状

  • 頻尿(トイレが近くなる)
  • 排尿時の痛み・灼熱感
  • 尿が濁る、尿に血が混じることがある
  • 下腹部の不快感・軽い痛み
  • 残尿感(すっきり出ない感じ)

原因

主な原因は大腸菌などの細菌が尿道から膀胱に侵入し、感染することです。
女性は尿道が短く、肛門に近いため感染しやすい傾向があります。
性交渉、疲労、ストレス、水分不足、排尿の我慢などが誘因になることがあります。

検査方法

  • 尿検査(白血球・細菌の有無を確認)
  • 尿培養検査(原因菌の特定と薬剤感受性の確認)
  • 必要に応じて超音波検査や膀胱鏡検査(再発や他疾患との鑑別)

治療方法

  • 抗菌薬の内服(原因菌に応じて数日間服用)
  • 水分を多めにとって排尿を促す
  • 痛みが強い場合は鎮痛薬を併用することもあります
  • 症状が改善しても、医師の指示通りに薬を最後まで飲み切ることが大切です

ご相談ください

膀胱炎は適切な治療で速やかに改善しますが、放置すると腎盂腎炎などに進行する恐れがあります。排尿に関する不快な症状がある場合は、早めにご相談ください。

過活動膀胱について

過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)は、急に強い尿意を感じてトイレに行きたくなる「尿意切迫感」を主な症状とする疾患です。頻尿や夜間頻尿、切迫性尿失禁(尿意に間に合わず漏れてしまう)を伴うこともあります。加齢とともに増加し、男女問わず中高年に多く見られますが、適切な治療で改善が期待できます。

主な症状

  • 尿意切迫感(急に我慢できない強い尿意)
  • 頻尿(昼間の排尿回数が8回以上)
  • 夜間頻尿(夜中に1回以上排尿のために起きる)
  • 切迫性尿失禁(尿意に間に合わず尿が漏れる)

原因

明確な原因がわからないこともありますが、加齢や神経系の異常、脳卒中や脊髄疾患、前立腺肥大症、膀胱の異常な収縮などが関係しているとされています。

検査方法

  • 問診・症状の確認(排尿日誌など)
  • 尿検査(感染や血尿の有無を確認)
  • 超音波検査(残尿量や膀胱の形状の確認)
  • 尿流測定(排尿の勢いや時間を測定)

治療方法

  • 生活指導(カフェイン・アルコール制限、水分摂取の調整など)
  • 膀胱訓練(排尿を我慢して間隔を徐々に延ばす)
  • 骨盤底筋体操(尿漏れの予防)
  • 薬物療法(抗コリン薬やβ3作動薬)
  • 重症例ではボトックス治療や神経刺激療法も検討されます

ご相談ください

過活動膀胱は、日常生活の質(QOL)を大きく低下させる疾患ですが、適切な治療により改善が期待できます。頻尿や尿意切迫感にお困りの方は、我慢せずにご相談ください。

腹圧性尿失禁について

腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、笑った時、重い物を持ち上げた時など、お腹に力が入った際に尿が漏れてしまう状態です。特に出産経験のある女性や中高年の女性に多く見られる症状で、骨盤底筋の緩みによって尿道の閉まりが悪くなることが原因です。

主な症状

  • 咳やくしゃみをしたときに尿が漏れる
  • 重い物を持ち上げたときや運動時に漏れる
  • 笑ったときに尿漏れが起きる
  • 尿意がなくても漏れてしまう

原因

主な原因は骨盤底筋の緩みです。出産や加齢、肥満、慢性的な咳・便秘、ホルモンバランスの変化などが影響して、尿道を支える筋肉が弱くなることで尿漏れが起こります。

検査方法

  • 問診(症状や生活への影響を確認)
  • 尿検査(感染や血尿の有無を確認)
  • パッドテスト(尿漏れの量を測定)
  • 超音波検査(膀胱・尿道の動きや残尿量の確認)

治療方法

  • 骨盤底筋体操:自宅でできる運動療法で、継続的に行うことが大切です。
  • 生活指導:体重管理、便秘改善、咳の治療など
  • 薬物療法:一部の方には薬が効果を示すことがあります
  • 手術療法:保存療法で効果が不十分な場合、手術が検討されます

ご相談ください

腹圧性尿失禁は多くの女性が経験する症状ですが、適切な治療により大きく改善することが可能です。「年齢のせい」とあきらめず、お気軽にご相談ください。

切迫性尿失禁について

切迫性尿失禁は、急に強い尿意を感じてトイレに間に合わずに尿が漏れてしまう症状です。過活動膀胱に伴って生じることが多く、生活の質(QOL)に大きな影響を与えることがあります。中高年以降の男女に多く見られますが、治療によって改善が期待できます。

主な症状

  • 突然強い尿意が起こり、我慢できずに漏れてしまう
  • トイレが近い(頻尿)
  • 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
  • 尿意の前兆がなく漏れることもある

原因

膀胱が勝手に収縮することが主な原因です。過活動膀胱や脳・脊髄疾患、ストレス、老化、ホルモンバランスの変化などが関係することがあります。

検査方法

  • 問診(症状や頻度、日常生活への影響を確認)
  • 尿検査(感染症や血尿の確認)
  • 排尿日誌(1日の排尿回数や失禁の有無を記録)
  • 超音波検査(残尿量の確認)
  • 尿流測定検査(排尿パターンの確認)

治療方法

  • 生活指導(カフェイン・アルコールの制限、水分摂取の調整など)
  • 膀胱訓練(排尿間隔を徐々に延ばす練習)
  • 骨盤底筋体操
  • 薬物療法(抗コリン薬やβ3作動薬など)
  • 重症例ではボトックス治療や神経刺激療法を行うこともあります

ご相談ください

切迫性尿失禁は恥ずかしい症状のため、受診をためらう方も少なくありませんが、適切な治療で大きく改善することが可能です。お困りの方は一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

間質性膀胱炎について

間質性膀胱炎は、膀胱に慢性的な炎症が起こり、膀胱の痛みや圧迫感、頻尿、尿意切迫感などを引き起こす病気です。通常の膀胱炎のような細菌感染は見られず、原因がはっきりしないことが多いのが特徴です。女性に多く、日常生活に支障をきたすこともあるため、適切な診断と長期的なケアが必要です。

主な症状

  • 頻尿(昼夜問わず排尿回数が多い)
  • 尿意切迫感(急にトイレに行きたくなる)
  • 膀胱に尿がたまると痛みや違和感が出る
  • 排尿によって痛みが軽くなる
  • 下腹部や会陰部の痛み・不快感
  • 性交時の痛み(女性に多い)

原因

原因はまだ完全には解明されていませんが、膀胱の粘膜の防御機構が弱まり、刺激物質が膀胱壁に影響を与えることで炎症が起こると考えられています。自己免疫、アレルギー、神経因性の異常なども関与している可能性があります。

検査方法

  • 尿検査(感染の除外)
  • 膀胱鏡検査(膀胱粘膜の状態を観察)
  • 水圧拡張試験(診断と治療の一部)
  • 超音波検査(他の病気との鑑別)
  • 排尿日誌(症状の記録)

治療方法

  • 生活指導(刺激の強い食べ物・飲み物を避ける)
  • 膀胱訓練(排尿間隔を延ばす練習)
  • 内服薬(鎮痛薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬など)
  • 膀胱内注入療法(薬剤を膀胱に注入)
  • 水圧拡張療法(膀胱を広げる処置)
  • まれに手術療法が検討されることもあります

ご相談ください

間質性膀胱炎は慢性の経過をたどることが多く、生活の質を大きく左右します。症状でお困りの方は、一人で悩まずに専門の医師にご相談ください。症状の緩和と生活改善を目指した治療を行っていきます。

尿道カルンクルについて

尿道カルンクルは、女性の尿道口にできる良性の粘膜の腫瘤(できもの)で、特に閉経後の女性に多く見られます。小さな赤い腫瘍のように見えることがあり、痛みや出血、排尿時の違和感を伴うこともありますが、多くは良性であり、治療により改善が可能です。

主な症状

  • 尿道口の腫れ、赤いできものが見える
  • 排尿時の痛みや違和感
  • 尿の飛び散りや排尿困難
  • 下着への出血やしみ出し
  • 触れると痛みがある

原因

閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の低下が原因のひとつと考えられています。

粘膜が薄くなり、炎症や外的刺激によって尿道口が突出しやすくなります。

検査方法

  • 視診(外陰部・尿道口の観察)
  • 触診(痛みや硬さの確認)
  • 必要に応じて尿検査(感染の有無を確認)
  • 経過により細胞診・組織検査を行うこともあります(悪性との鑑別)

治療方法

  • 外用薬(女性ホルモン軟膏、ステロイド軟膏など)
  • 症状が軽ければ経過観察
  • 出血が多い、痛みが強い、感染を繰り返す場合は外科的切除が行われることもあります

ご相談ください

尿道カルンクルは良性のことがほとんどですが、症状が続く場合や出血を繰り返す場合には、泌尿器科の受診をおすすめします。日常生活で気になる症状があればお気軽にご相談ください。

膀胱瘤(膀胱脱)について

膀胱瘤(膀胱脱)は、骨盤底の筋肉や靭帯のゆるみにより、膀胱が膣側に下がって膣から突出する状態を指します。出産や加齢、閉経、肥満などが主な原因で、中高年の女性に多く見られます。排尿や日常生活に支障をきたすことがあり、早めの診断と適切な対応が重要です。

主な症状

  • 膣から何かが出ている感じがする
  • 陰部に違和感、圧迫感
  • 頻尿や排尿困難、残尿感
  • 尿漏れ(腹圧性尿失禁)
  • 長時間立った後や夕方に症状が悪化
  • 性交時の違和感

原因

出産(特に経腟分娩)、加齢による筋肉の衰え、閉経による女性ホルモンの低下、肥満、重い物を持つ習慣、慢性的な咳や便秘などが影響して、骨盤底の支持組織が弱まり、膀胱が下がってくることで発症します。

検査方法

  • 内診(膣の状態、脱出の程度を確認)
  • 残尿測定(排尿後の尿の残りを確認)
  • 尿検査(感染や血尿の確認)
  • 超音波検査やMRI(他の骨盤臓器脱との鑑別に使用されることもあります)

治療方法

  • 骨盤底筋体操による筋力強化
  • ペッサリー挿入(膣内に器具を入れて膀胱の脱出を防ぐ)
  • 薬物療法(女性ホルモン補充が効果的な場合もあります)
  • 手術療法(経腟的または腹腔鏡的に膀胱を元の位置に戻す手術)

ご相談ください

膀胱瘤は命に関わる病気ではありませんが、日常生活に大きな影響を及ぼします。症状がある場合は我慢せず、早めにご相談ください。症状の程度に応じた治療法をご提案いたします。