子どもの疾患

夜尿症(小児)について

夜尿症とは、5歳を過ぎても夜間に無意識におねしょをしてしまう状態を指します。子どもの約10〜20%に見られる比較的よくある症状で、成長とともに改善することが多いですが、心理的要因や身体的な原因が関係している場合もあり、適切な対応が必要です。

主な特徴

  • 夜間、眠っている間に尿を漏らしてしまう(おねしょ)
  • 日中の排尿は正常で、特に問題はない
  • 頻度には個人差があり、毎晩起こる子もいれば週に数回の子もいる
  • 成長とともに自然に治ることが多い

原因

夜尿症の原因はさまざまですが、主に以下のような要因が考えられます:

  • 夜間の尿量が多い(抗利尿ホルモンの分泌が少ない)
  • 膀胱の容量が小さい、または過敏
  • 深い眠りで尿意に気づかない
  • 精神的ストレスや生活習慣の乱れ
  • 便秘が関係していることもあります

検査方法

  • 問診(生活習慣、頻度、家族歴などの確認)
  • 排尿・夜尿日誌(排尿のパターンを把握)
  • 尿検査(感染や糖尿病の除外)
  • 必要に応じて超音波検査や血液検査

治療・対応方法

  • 生活習慣の改善(寝る前の水分制限、規則正しい睡眠)
  • 起こしてトイレに行かせる「夜間排尿」
  • 膀胱トレーニング(昼間に尿を我慢する訓練)
  • 夜尿アラーム療法(尿意で起きる訓練)
  • 薬物療法(抗利尿ホルモン薬や膀胱拡張薬など)※必要な場合のみ

ご家族へのアドバイス

夜尿症は決して子どものせいではありません。叱らず、焦らず、子どもを安心させることが最も大切です。心配な場合や長期化する場合は、泌尿器科や小児科にご相談ください。

包茎(小児)について

小児の包茎とは、陰茎の先端(亀頭)が包皮に覆われていて、むくことができない状態を指します。多くの男児に見られる正常な発育段階であり、成長とともに自然に改善することがほとんどです。ただし、炎症や排尿障害を繰り返す場合は医師の診察が必要となることがあります。

主な特徴

  • 包皮がむけない(亀頭が見えない)
  • 排尿はできているが、包皮の先がふくらむことがある
  • 無理にむこうとすると痛みや出血を伴うことがある
  • 年齢とともに自然にむけるようになることが多い

原因と経過

生まれたばかりの男児のほとんどは真性包茎の状態です。これは自然な状態であり、成長とともに包皮と亀頭が徐々にはがれ、小学校高学年から中学生頃には多くの子どもが自然にむけるようになります。

注意が必要な症状

  • 排尿しづらい、包皮が大きく膨らむ
  • 包皮の先が赤く腫れる、膿が出る(亀頭包皮炎)
  • 包皮の出口が極端に狭い
  • 包皮が途中で引っかかって戻らなくなる(カントン包茎)

治療方法

  • 多くは自然経過で改善するため、無理にむかないことが大切です。
  • 炎症を繰り返す場合はステロイド外用薬で対応することがあります。
  • カントン包茎や排尿障害がある場合は、手術(環状切開術)を検討することがあります。

ご家族へのアドバイス

小児包茎の多くは自然な発育の一過程であり、慌てる必要はありません。無理にむいたり、強く洗浄したりすると逆に炎症を引き起こすことがあります。不安な点や症状がある場合は、泌尿器科または小児科へご相談ください。

亀頭包皮炎(小児)について

亀頭包皮炎とは、陰茎の先端(亀頭)や包皮に炎症が起きる状態を指します。小児では包茎による汚れの滞留や不十分な洗浄が原因となることが多く、赤みや腫れ、痛み、分泌物などの症状を伴います。適切な治療で改善しますが、繰り返す場合には包茎の管理も重要になります。

主な症状

  • 陰茎先端の赤み、腫れ
  • 痛みやかゆみ
  • 白いカス(恥垢)や膿のような分泌物
  • 排尿時のしみるような痛み
  • 下着へのしみ出しや悪臭

原因

亀頭包皮炎の原因は以下のようなものがあります:

  • 包茎による汚れの滞留
  • 不十分な洗浄や過剰な刺激
  • 細菌や真菌(カンジダなど)による感染
  • 下着やオムツの刺激による摩擦やかぶれ

検査方法

  • 視診(腫れや赤み、分泌物の確認)
  • 必要に応じて分泌物の検査(細菌・真菌の確認)
  • 尿検査(併発する尿路感染症の確認)

治療方法

  • 患部の清潔を保つ(ぬるま湯でやさしく洗う)
  • 抗菌薬や抗真菌薬の外用薬を使用
  • 痛みや腫れが強い場合は内服薬を使うこともあります
  • 炎症を繰り返す場合は包茎治療を検討することがあります

ご家族へのアドバイス

無理に包皮をむこうとせず、やさしく洗浄して清潔を保つことが大切です。炎症が見られる場合や、症状が繰り返す場合には早めに受診しましょう。必要に応じて包茎の評価や治療も行いますので、お気軽にご相談ください。

陰嚢水腫(小児)について

陰嚢水腫とは、精巣の周囲に液体(漿液)がたまって陰嚢が腫れて見える状態です。小児の陰嚢水腫は出生後すぐから見られることがあり、多くは自然に治る良性の病気です。ただし、一部の症例では手術が必要となることがあります。

主な症状

  • 陰嚢が腫れている(片側が多い)
  • 腫れは柔らかく、痛みはほとんどない
  • 日によって大きさが変化することがある
  • 光を当てると透けて見える(透光性あり)

原因

胎児期に腹膜が精巣とともに陰嚢まで下降する際、腹膜の一部が残って腹水がたまることが原因です(交通性水腫)。通常は1歳頃までに自然に閉じて治癒しますが、閉じずに残った場合は液体がたまり続け、腫れとして現れます。

検査方法

  • 視診・触診(腫れの性状や左右差を確認)
  • 透光検査(懐中電灯などで陰嚢を照らす)
  • 超音波検査(液体の貯留や精巣の状態を確認)

治療方法

  • 多くは1歳頃までに自然治癒するため経過観察を行います
  • 1歳を過ぎても改善しない場合や、腫れが大きくなる場合は手術(陰嚢水腫根治術)を検討します
  • 穿刺によって液体を抜く方法は再発の可能性が高いため、一般的には行いません

ご家族へのアドバイス

小児の陰嚢水腫は多くの場合自然に治るため、過度に心配する必要はありません。ただし、腫れが大きくなる、痛みを訴える、急に腫れてきたなどの変化がある場合は、精巣捻転などの緊急疾患との鑑別も含めて早めに受診してください。

精巣捻転(小児)について

精巣捻転とは、精巣(睾丸)が精索ごとねじれて血流が遮断される状態です。突然の陰嚢痛や腫れを伴い、放置すると精巣が壊死してしまう恐れがあるため、緊急の対応が必要です。主に思春期の男児に多く見られますが、新生児や乳幼児にも起こることがあります。

主な症状

  • 突然の激しい陰嚢の痛み(片側が多い)
  • 陰嚢の腫れや赤み
  • 精巣の位置が高くなる、横向きになる
  • 吐き気や嘔吐を伴うことがある
  • 発熱(まれ)
  • 痛みがなくなった場合でも、血流が止まった状態が続いている可能性がある

原因

精巣の固定が不十分な「鐘の音様変形(bell clapper deformity)」という状態が原因で、運動や睡眠中、特にきっかけがなくても突然発症することがあります。

検査方法

  • 視診・触診(精巣の位置や痛みの程度を確認)
  • 超音波検査(血流の有無を確認)※診断に重要
  • 状況により緊急手術が優先され、検査よりも処置が優先されることがあります

治療方法

  • 緊急手術(精巣固定術):ねじれを解除し、左右の精巣を固定して再発を予防
  • 発症から6時間以内であれば精巣を温存できる可能性が高くなります
  • 時間が経過して壊死していた場合は摘出が必要になることがあります

ご家族へのアドバイス

精巣捻転は「陰嚢の緊急事態」であり、早急な対応が必要です。お子さんが突然陰嚢の痛みを訴えた場合は、すぐに泌尿器科または救急外来を受診してください。適切な処置が早ければ早いほど、精巣を温存できる可能性が高まります。

停留精巣(小児)について

停留精巣とは、本来陰嚢内にあるべき精巣が、出生後も陰嚢内に降りてこず、腹部や鼠径部(足の付け根のあたり)に留まっている状態をいいます。生後間もなく自然に下降することもありますが、1歳を過ぎても下降しない場合は治療が必要となります。

主な症状

  • 陰嚢の片側(まれに両側)が空(精巣が触れない)
  • 精巣が鼠径部などに触れることがある
  • 腫れや痛みは通常ないが、将来的なリスクがある

原因

胎児期に精巣は腹部から陰嚢へと下降しますが、この過程に異常があると途中でとどまってしまいます。明確な原因は分かっていませんが、早産やホルモンの影響が関係しているとされています。

検査方法

  • 視診・触診(精巣の位置の確認)
  • 超音波検査(精巣が鼠径部にあるかどうかの確認)
  • MRIやCT検査(腹腔内精巣が疑われる場合)
  • 必要に応じて腹腔鏡検査(診断と治療を兼ねる)

治療方法

  • 1歳頃までに自然に降りてこない場合は手術が勧められます(精巣固定術)
  • 手術は通常、全身麻酔下で短期入院で行われます
  • 早期に治療を行うことで、将来の不妊や精巣がんのリスクを軽減できます

ご家族へのアドバイス

停留精巣はよくある先天的な異常の一つで、適切な時期に治療することで将来のリスクを軽減できます。健診などで指摘された場合は放置せず、泌尿器科や小児外科での評価・治療を受けることをおすすめします。