男性に多い疾患

前立腺肥大症について

前立腺肥大症は、中高年の男性に多く見られる良性の疾患で、前立腺が加齢とともに大きくなり、尿道を圧迫することで排尿に関するさまざまな症状が現れる病気です。

主な症状

  • 排尿の勢いが弱くなる
  • 尿の切れが悪く、残尿感がある
  • 夜間に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
  • 尿意を我慢できずにトイレに駆け込む(尿意切迫感)
  • 排尿に時間がかかる(遅尿)

原因とメカニズム

前立腺は膀胱の下に位置し、尿道を取り囲む臓器です。加齢により前立腺が肥大すると、尿道を圧迫し、排尿に支障をきたすようになります。

検査方法

  • 問診・症状の確認
  • 超音波検査(前立腺の大きさや残尿量を測定)
  • 尿流測定検査(排尿の勢いを確認)
  • 血液検査(PSA値の測定)

治療方法

  • 生活指導:排尿習慣の見直し、就寝前の水分制限、カフェイン・アルコールの制限など、日常生活の工夫が重要です。
  • 薬物療法:前立腺の筋肉を緩める薬(α遮断薬)や、前立腺を小さくする薬(5α還元酵素阻害薬)を使用します。
  • 手術療法:薬で効果が不十分な場合には、前立腺の内腺をレーザーでくり抜くHoLEP(ホーレップ)手術を行います。

ご相談ください

排尿の悩みは年齢のせいだけではありません。気になる症状がある方は、早めにご相談ください。適切な検査と治療により、生活の質を改善することが可能です。

前立腺がんについて

前立腺がんは、前立腺に発生する悪性腫瘍で、主に中高年の男性に多く見られます。初期には自覚症状が少なく、健康診断などでPSA(前立腺特異抗原)検査を通じて発見されることが増えています。

主な症状

  • 排尿時の違和感や尿の出が悪い
  • 夜間頻尿
  • 血尿や血精液
  • 骨への転移による腰痛や背中の痛み(進行した場合)
  • 多くの場合、初期には無症状

検査方法

  • 血液検査(PSA値の測定)
  • 直腸診(指で前立腺を触って硬さを確認)
  • 超音波検査(前立腺の大きさや状態を確認)
  • MRI検査(がんの広がりを詳しく調べる)
  • 前立腺針生検(組織を採取してがん細胞の有無を確認)

治療方法

  • 監視療法:進行が遅く、すぐに治療を必要としない場合は経過観察を行います。
  • 手術療法:前立腺全摘除術(開腹手術または腹腔鏡・ロボット支援手術)
  • 放射線療法:外部照射や小線源治療
  • ホルモン療法:男性ホルモンの働きを抑えることでがんの進行を抑える治療
  • 化学療法:進行がんや再発例に対して行います

ご相談ください

前立腺がんは早期発見・早期治療により、十分に治療可能ながんです。定期的なPSA検査を受けることが早期発見の鍵となります。ご不安な症状がある方や検査をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

男性更年期障害(LOH症候群)について

LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)は、男性ホルモン(主にテストステロン)の加齢による減少により、心身にさまざまな不調が現れる状態です。女性の更年期障害に類似していますが、症状はより多様で、徐々に進行するのが特徴です。

主な症状

  • 疲れやすい、倦怠感が取れない
  • やる気が出ない、うつっぽい
  • 性欲の低下、勃起力の低下
  • 睡眠障害(寝つきが悪い・途中で目が覚める)
  • 集中力・記憶力の低下
  • イライラしやすくなる
  • 筋力の低下、体脂肪の増加
  • 骨密度の低下による骨粗しょう症

原因

加齢に伴い男性ホルモン(テストステロン)の分泌が低下することが主な原因です。ストレスや生活習慣、睡眠不足、過度の飲酒などもホルモンバランスに影響を与えるといわれています。

検査と診断

LOH症候群の診断には以下を行います。

  1. 問診・質問票(AMSスコアなど)
  2. 血液検査(フリーテストステロン値の測定)

テストステロン値が基準値以下で、かつ症状が認められる場合にLOH症候群と診断されます。

治療方法

  • 生活習慣の改善
    バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠など
  • 心理的サポート
    ストレスケア、カウンセリング
  • ホルモン補充療法(テストステロン補充)
    注射や塗り薬による男性ホルモンの補充を行います
    ※前立腺疾患などのリスクもあるため、医師による適切な管理が必要です。

ご相談ください

「年齢のせい」とあきらめていませんか?

LOH症候群は適切な診断と治療で改善が期待できます。心身の不調でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

性感染症(クラミジア、淋菌、マイコプラズマなど)について

性感染症(STI)について

性感染症(STI:Sexually Transmitted Infections)は、性行為を通じて感染する病気の総称です。主にクラミジア、淋菌、マイコプラズマ、トリコモナスなどの細菌や原虫が原因となる感染症があり、男女ともに発症し、無症状のことも多いため注意が必要です。

主な症状

※感染症の種類によって症状は異なりますが、代表的なものは以下の通りです。

  • 排尿時の痛み(尿道炎)
  • 陰部のかゆみや赤み、腫れ
  • 性器からの異常な分泌物(膿)
  • 下腹部の痛み
  • 発熱、倦怠感(重症化した場合)
  • 無症状で経過し、気づかないことも多い

主な感染症と特徴

■ クラミジア感染症
  • 最も多い性感染症の一つ
  • 男女ともに無症状が多く、不妊の原因になることもあります
  • 男性では尿道炎を起こします
■ 淋菌感染症
  • クラミジアに似た症状を引き起こしますが、症状が強く出る傾向があります
  • 男性では膿性の尿道分泌物を起こすことがあります
■ マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症
  • クラミジアと似た尿道炎を起こす細菌
  • 抗生剤が効きにくく、耐性菌が問題となっています

検査方法

  • 尿検査
  • 咽頭ぬぐい液検査(オーラルセックスによる感染確認)
  • PCR法などの核酸増幅法による病原体の検出
  • 血液検査(梅毒、HIVなどの確認)

治療方法

  • 感染原因に応じた抗生物質の投与(内服または注射)
  • パートナーも同時に検査・治療を行うことが重要
  • 治療後の再検査(特に耐性菌の可能性がある場合)
  • 症状が改善しても医師の指示通りに薬を飲みきる

ご相談ください

性感染症は早期発見・早期治療が大切です。気になる症状がある方、パートナーに感染の可能性がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。プライバシーに配慮して診療を行っておりますので、安心して受診ください。

精巣上体炎について

精巣上体炎は、精巣上体に炎症が起こる病気で、急激な陰嚢の腫れや痛みを伴います。若年層では性感染症(クラミジアや淋菌)が、高齢者では尿路感染症が原因となることが多くみられます。

主な症状

  • 陰嚢の腫れ、圧痛
  • 陰嚢の熱感や赤み
  • 突然の陰嚢痛(片側が多い)
  • 発熱、悪寒
  • 排尿時の痛み、頻尿
  • 分泌物(性感染症が原因の場合)

原因

精巣上体炎の原因は年齢層により異なります。

若年男性ではクラミジアや淋菌などの性感染症が多く、高齢者では前立腺炎や膀胱炎などの尿路感染が関係していることが多いです。

検査方法

  • 視診・触診による陰嚢の評価
  • 尿検査(感染の有無を確認)
  • 尿道分泌物検査(性感染症の検出)
  • 血液検査(炎症反応の確認)
  • 陰嚢超音波検査(精巣捻転との鑑別)

治療方法

  • 抗菌薬の投与(原因菌に応じた抗生物質)
  • 鎮痛薬の使用
  • 重症例では入院治療が必要な場合もあります

ご相談ください

急に陰嚢が腫れた、痛くなったという場合は、精巣捻転など緊急の疾患との鑑別も重要です。早期に正確な診断と治療を受けることが大切ですので、速やかに受診してください。

急性前立腺炎について

急性前立腺炎は、前立腺に急性の炎症が起こる疾患で、細菌感染によって引き起こされます。高熱、排尿時の痛み、会陰部(肛門と陰嚢の間)の不快感などの症状が急激に現れます。若年から中高年の男性に見られ、早期の診断と治療が重要です。

主な症状

  • 発熱(38℃以上)や悪寒
  • 排尿時の痛み(排尿困難)
  • 頻尿、尿意切迫感
  • 会陰部や下腹部の痛み・不快感
  • 残尿感
  • 全身倦怠感
  • 重症化すると尿閉(尿が出なくなる)をきたすことがあります

原因

主に大腸菌などの腸内細菌が尿道から前立腺に侵入して感染・炎症を起こします。排尿障害、カテーテル使用、前立腺生検後、免疫低下などがリスク因子となります。

検査方法

  • 尿検査(細菌や白血球の有無を確認)
  • 血液検査(炎症反応、白血球数)
  • 超音波検査(前立腺の腫れや膿瘍の有無)

治療方法

  • 抗菌薬の内服または点滴治療(原因菌に応じた抗生物質)
  • 解熱鎮痛剤の使用
  • 水分補給と安静
  • 尿閉時は導尿または膀胱留置カテーテルを行うことがあります
  • 重症例では入院治療が必要です

ご相談ください

急性前立腺炎は放置すると重症化し、前立腺膿瘍や敗血症を引き起こす可能性があります。排尿時の強い痛みや発熱がある場合は、速やかに泌尿器科を受診してください。

慢性前立腺炎について

慢性前立腺炎は、3か月以上続く前立腺の慢性的な炎症や違和感を伴う病気で、明確な細菌感染が見られない「非細菌性慢性前立腺炎(慢性骨盤痛症候群)」が多くを占めます。20〜50代の男性に多く見られ、再発しやすく、日常生活に支障をきたすこともあります。

主な症状

  • 会陰部(肛門と陰嚢の間)の鈍痛や不快感
  • 下腹部・陰嚢・陰茎・太もも付け根の違和感
  • 排尿後の不快感や残尿感
  • 頻尿、排尿時の違和感
  • 性機能の低下、射精時の痛み
  • 精神的な不調(イライラ、不安など)

原因

原因は明確ではありませんが、ストレスや自律神経の乱れ、骨盤内の血流障害、過去の感染などが関与していると考えられています。

検査方法

  • 問診(症状の経過、頻度、日常生活への影響)
  • 尿検査(感染の有無を確認)
  • 超音波検査(前立腺や膀胱の状態を確認)
  • 尿流測定検査(排尿の勢いや残尿の有無を確認)

治療方法

  • 薬物療法(抗菌薬、α遮断薬、鎮痛薬、自律神経調整薬など)
  • ストレス管理・生活指導
  • 長期的な経過観察と個別に合った治療

ご相談ください

慢性前立腺炎は症状の個人差が大きく、治療には時間がかかることもあります。日常生活での不快な症状にお悩みの方は、我慢せずに早めにご相談ください。

陰嚢水腫(成人)について

陰嚢水腫は、精巣の周囲に漿液(しょうえき)と呼ばれる液体がたまって、陰嚢が腫れる病気です。成人の場合、炎症、外傷、手術後、または原因不明で発症することがあり、徐々に腫れが大きくなることがあります。良性の疾患ですが、精巣腫瘍との鑑別が重要です。

主な症状

  • 陰嚢の腫れ(通常は片側)
  • 痛みは少ないか、あっても鈍痛程度
  • 陰嚢の張り感や重だるさ
  • 柔らかく弾力がある触感
  • 光を当てると中が透けて見える(透光性あり)

原因

成人の陰嚢水腫は、以下のような要因で発生することがあります。

  • 精巣や精巣上体の炎症(副睾丸炎など)
  • 外傷(打撲など)
  • 腹部や鼠径部の手術後
  • 原因不明(特発性)

検査方法

  • 視診・触診(大きさや透光性の確認)
  • 超音波検査(精巣の状態や腫瘍との鑑別)
  • 必要に応じて血液検査や腫瘍マーカー(精巣腫瘍の除外)

治療方法

  • 無症状で小さな水腫は経過観察とすることもあります。
  • 腫れが大きい、違和感が強い、見た目が気になる場合には手術(陰嚢水腫根治術)による治療が有効です。
  • 針で液体を抜く処置(穿刺)は一時的な対処法であり、再発しやすいため一般的には推奨されません。

ご相談ください

陰嚢の腫れや違和感に気づいた場合は、早めに泌尿器科を受診してください。陰嚢水腫は良性のことが多いですが、精巣腫瘍など重大な疾患との見極めが重要です。

精索静脈瘤について

精索静脈瘤は、精巣へ向かう静脈(精索静脈)が拡張し、こぶ状にふくらんでしまう病気です。特に左側に多く、陰嚢の違和感や痛み、不妊症の原因となることもあります。成人男性の約10〜15%に見られ、立ち仕事や運動後に症状が強くなることがあります。

主な症状

  • 陰嚢の違和感、鈍痛
  • 立位や運動後に痛みが増す
  • 陰嚢の腫れや血管のうねりが触れる
  • 長時間立った後に陰嚢が重く感じる
  • 不妊(精子の質や数の低下)

原因とメカニズム

精索静脈には逆流を防ぐ静脈弁がありますが、この弁が壊れると血液が逆流し、静脈が拡張してこぶ状になります。左側に多いのは、左精巣静脈が腎静脈に直角に合流し、圧がかかりやすいためです。

検査方法

  • 視診・触診(立位で陰嚢の腫れや血管のうねりを確認)
  • 超音波検査(逆流の有無や血管の拡張を確認)
  • 必要に応じて精液検査(不妊の評価)

治療方法

  • 無症状や軽症の場合は経過観察とされます。
  • 症状が強い場合や不妊症の原因と判断される場合は、手術が推奨されます。
  • 手術方法には「顕微鏡下低位結紮術」や「腹腔鏡下手術」があり、精索静脈を結紮・切除することで逆流を防ぎます。

ご相談ください

陰嚢の違和感や不妊でお悩みの方は、精索静脈瘤が原因である可能性があります。適切な検査と診断によって、治療方針を決めることができますので、お気軽にご相談ください。

包茎について

包茎とは、陰茎の先端(亀頭)が包皮によって覆われていて、露出しにくい状態のことを指します。成長とともに自然に改善する場合もありますが、成人になっても包皮がむけない場合や、衛生面・性機能・感染症リスクなどの問題がある場合には、治療の対象となることがあります。

包茎の種類

  • 真性包茎:包皮口が非常に狭く、亀頭をまったく露出できない状態。清潔保持が困難で感染や炎症を起こしやすく、手術が推奨されます。
  • 仮性包茎:平常時は亀頭が包皮に覆われていますが、手で簡単にむくことができる状態。症状がなければ必ずしも治療は不要ですが、見た目や衛生上の理由で手術を希望する方もいます。
  • カントン包茎(嵌頓包茎):包皮を無理にむいた後に戻らなくなり、締め付けられて血流が障害される緊急状態。早急な医療処置が必要です。

主な症状・リスク

  • 亀頭や包皮の炎症(亀頭包皮炎)
  • 排尿しにくい、尿が飛び散る
  • 性交時の痛みや違和感
  • 悪臭やかゆみなどの衛生的問題
  • 性感染症や尿路感染症のリスク増加
  • 見た目や心理的なコンプレックス

治療方法

  • 軽度で症状のない仮性包茎の場合は、特に治療を行わず経過観察とすることがあります。
  • 真性包茎や繰り返す炎症・不衛生な状態がある場合、包茎手術(環状切開術)が行われます。
  • 手術は日帰りで行われ、局所麻酔で安全に実施可能です。

ご相談ください

包茎はデリケートなお悩みですが、医学的に適切な治療により多くの問題が改善できます。症状が気になる方や、衛生面や見た目でお悩みの方は、安心してご相談ください。

亀頭包皮炎について

亀頭包皮炎は、陰茎の先端(亀頭)や包皮に炎症が起こる病気で、赤みやかゆみ、痛み、分泌物などの症状を伴います。不衛生な状態や刺激、感染などが原因となり、小児から成人まで幅広い年齢層で見られます。

主な症状

  • 亀頭や包皮の赤み・腫れ
  • かゆみ、ヒリヒリ感
  • 白いカス(恥垢)や膿のような分泌物
  • 排尿時のしみるような痛み
  • 悪臭やただれ(重症例)

原因

以下のような原因により発症します:

  • 不十分な洗浄や不衛生な状態
  • 刺激の強い石けんや洗浄剤
  • 細菌や真菌(カンジダなど)の感染
  • 包茎による汚れの滞留
  • 性交渉による刺激や感染

検査と診断

  • 視診による炎症の確認
  • 分泌物や皮膚の検査(細菌や真菌の確認)
  • 尿検査(感染や尿路炎症の有無)

治療方法

  • 局所の清潔を保つ(ぬるま湯でやさしく洗う)
  • 抗生物質や抗真菌薬の外用または内服(原因に応じて)
  • かゆみや炎症が強い場合はステロイド外用薬を使用することもあります
  • 包茎が原因の場合、再発防止のため包茎治療が検討されます

ご相談ください

亀頭包皮炎は適切な治療で改善しますが、繰り返す場合は包茎や感染の有無を確認することが大切です。症状に気づいたら、早めに医師の診察を受けましょう。